アレンは神に「勇者とは何か?」を聞きに行ったもの、神からの答えは曖昧で、どうにも腑に落ちないままだった。何からやればわからない、頭の中には疑問がぐるぐると渦巻いていた。
「どうせなら具体的に教えてくれてもいいのに…使えないな神!(あいつ)」と、アレンはぶつぶつつぶやきながら神殿を後にした。もっと具体的に聞ける人がいないかと考え、ふと村のことをまとめている村長を思いだした。
村長はこの村で最も経験があり、村人の信頼も厚い人物だ。 もし彼が勇者になる具体的な何かについて知っているのであれば、もう少しマシなアドバイスがもらえるかもしれない。
とりあえず期待できないが行ってみるか・・・多分前回と同じと思うけど。
村長の家に着くと
「おお、アレンじゃないか。どうした?今日は」
「あのさ、村長に聞きたいことがあるんだけど。勇者に選ばれたんだけど具体的に何からすれば良いか知ってたら教えてくれない。」
「いや、でも正直、どうすればいいのかが全然わからないんだ。神様にも聞いてみたんだけど、具体的にこれから始めてみてはとか言わないし。」
村長は聞きながら考え込む素振りを見せ、しばらく沈黙した。
「ふむ…なるほどな。では」
その言葉にアレンは落胆した。やっぱりか・・・
「まあ、簡単なことだ。勇者として君の名前や姿を使って観光客を呼ぶんだよ。そして、君の肖像画を飾ってお賽銭を投げてもらうんだ!」
村長は大きく笑いながら力強く言った。村にとって大きなチャンスになる。勇者ってのは、ただそれだけでブランド価値があるんだ」
その話を聞いて、アレンは自分が勇者に選ばれたのは、もしかしたらもっと村人にとって深い意味があると思っていたが、村長の話は金の話ばかりだ。
「でも、俺は勇者として本当に何をすべきか知りたいんだ。村を盛り上げるために利用されるだけじゃなくて、ちゃんとした『勇者の役目』を知りたいんだ!」
「まあ、深く考えることはないんじゃないかな?君が勇者ってことが分かった時、みんなが喜んでいたから。それで十分だろう?君が特別なことを気にしなくても、村のために名前を貸してくれれば、役目は果たせる」
アレンは、村長のその言葉にますます疑問を感じ始めた。 結局、自分が勇者として選ばれた意味は村長には関係ないのだと痛感した。はとりあえず「利用価値がある」だけか。
「そんなのって…本当に勇者の仕事なのか?」アレンは小さな声でつぶやいたが、
「そうだ、勇者祭りも開催しようじゃないか!君の姿を模した衣装や、君の名前を冠した商品も出そうそれで、村全体が盛り上がるだろう。そして、君がその祭りの顔として参加してくれたら大成功さ。」
「やっぱりこいつもダメなやつだ・・・」と思ったが村長は利用価値があるかもしれないと気づいた。「俺は自分勝手な勇者になると決めたじゃないか。とりあえず金儲けから始めてみるか」「勇者の名前と村長を使って・・・」
アレンは含み笑いを隠しながら村長に「お願いします」と返事をしていた。
『おかねってなあに』
作:山崎香奈子 / 絵:村上勉
この絵本では、お金がどのように世の中を循環しているのかを、子どもたちにもわかりやすく説明しています。簡単に理解できる内容になっています。働いてお金を稼ぐことや、そのお金を使って誰かがまた働く、という「お金の循環」の仕組みが描かれており、子どもたちにもお金の流れや価値がわかりやすく伝わる絵本です。
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