村長って・・・「結局マネーなの?」

ある日、アレンの家に村長が突然やって来た。口元には不敵な笑みを落としながら、アレンに提案を持ちかける。村長は町の発展に熱心な人物だが、その考えが時折大胆になることで知られていた。

目を輝かせていた。町おこしとして、アレンを大きな宣伝材料にしようと考えているのが見えた。

「アレン、君が勇者に選ばれたんやから、これはもう村の大チャンスや! 村の町おこしのためにも君の名前を使わせてくれんか? 「勇者が育った村やて、噂になれば旅行客もぎょうさん来てみんなが喜ぶわ!」

村の特産品も今までの「ワラ人形」「固いパン」「すっぱいおにぎり」なんかじゃなくて、これからは「勇者のワラ人形(呪い×20倍かも)」「勇者の固いパン(長期保存可能)」「勇者のすっぱいおにぎり(酢飯の代わり)」見たいにブランド化できるで!、売り切れ必死や面白くなってきた!!

村長の激しく熱の入った演説が30分ほど続いている、村の未来を見据えた話のように聞こえたが、その目はどこか冷たく、打算的な光を張っていた。

「多分次の選挙再当選したいんだろうな・・・」「賄賂が沢山かもな・・・」「だから村長の家にはエレベータとプールがあって、良く修理や点検の業者が来ているんだろうな。」

村長はさらに続けた。「とにかく金なんだ!金がないとなんにもできん!」「俺のおかげでこの100人足らずの村が存続できているんだ!」「勇者は金の生る木だ」「俺の為に働け!」

アレンは、その言葉を聞いて戸惑い絶望した。

「勇者なんかになったら奴隷みたいになるのかな・・・」

アレンが考えている間も、村長は同じことを繰り返し言っている。

「アレン、君が勇者に選ばれたということは町にとっても大きなニュースだ!これを聞いて、我々の村をもっと盛り上げようじゃないか。君の勇者としての名声で、特産物を売り出して、観光客を呼び込みもう。君の名前と勇者のイメージを、無料で使わせてもらえないかね?」

アレンは目を伏せて中立した。自分が勇者として何も何もないことを痛感していたのだ。何もできないし、勇者という大役に全く自信がない。アレンは、自分が勇者に選ばれたことを呪った。

「勇者やりたくないんです!」

「何を言ってもなんだ、アレン!君は選ばれたんだ。君の気持ちがどうであれ、君はもう勇者なんだよ。君には責任がある。そしてその責任は、村全体の未来にも続いている。だから、逃げるわけにはいかないんだ」

「特産物も売れ残ったら買い取らされるかも・・・」

村長は熱弁の最後に「これを読め!」と強い口調でアレンに1冊の絵本を渡した。



『あしなが』 by 松居直

アレンは手元の絵本を見つめながら、胸の中で言いようのない焦感を抱いていた。なぜ村長はこの本を渡したのか、そして自分に何を期待しているのか、その裏には隠されているのか、疑念ばかりが膨らむ。

アレンは、読んでも読んでも、理解できなかった。いや理解したくなかった!物語何度も読んで自分に聞いてみた。 しかし、ますます自分の無力さを感じて終わってしまっただけだった。

「俺は、勇者なんかじゃないんだ…」

「俺は勇者なんかになりたい」

アレンは、そうつぶやきながら、無理に勇者としての役割を果たすために自分を押し殺すべきか、それとも自分の心に正直になって逃げ出すべきか、悩み続けるのだった。

どうすればこの状況を変えられるのか。どうすれば、自分らしく生きていけるのか。誰にも分からない、助けを求めても、戻ってくるのは期待と無責任な励ましだけ。

「自分はただの普通の人間だ。勇者なんて、押しつけられたくなんかないんだ…」と、アレンは心の底からそう感じたまま、窓の外の景色を眺めた。

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